ママ、にこってして

「ママ、にこってして」
そう言いながら、娘がわたしに向かって作り笑いをする。

こういったことが、このところ何度かありました。

そのときのわたしは、一体、どんな顔をしていたのでしょうか。

少なくとも、心はギザギザ、トゲトゲ。
焦っていたり、怒っていたり、イライラしていたり。
まるで砂漠の中を歩いているような、そんな気分でした。

3歳になった娘は、いつも元気いっぱい。
お歌を歌ったり、おままごとをしたり、お人形遊び、それから積み木に粘土…
気がつくと家の中を走り回っているし、“おうち公園”(リビングのことです)のすべり台で大胆に遊んでいます。

おしゃべりも達者になってきて、
「ごはんだよー」と声をかけたら「あとでたべるからー」と。
「おふろはいろー」と呼びかけたら「ちょっとまってー、いま、○○してるからー」と。
「ねんねしよー」と誘ったら「アンパンマンみるの!」と。

当たり前だけれど、娘は、もう立派な「1人の人」として目の前に存在していて、
わたしの思惑や予定を、スルスルとほどいていきます。

そんなわけで、気がつくと、
さっきお話ししたような“砂漠”が心の中に広がっていき、
「ママ、にこってして」と言われるわたしが出来上がっている次第です。

「どんなときも心に余裕をもって、
娘の言動を受け止め、臨機応変に対応できる母でありたい」
そんな理想を持っています。

1日のうちの何度かはそれなりに対応できても、
積み重なった「イライラ」が、結局はどこかのタイミングで爆発する。
現実は、こんな感じです。

「ママ、にこってして」

そう言われると、大人びたことをいう娘をかわいらしく感じながらも、
やっぱりどこか、切ない。

とってつけたような“作り笑い”をする娘の顔を見るのは、
もっともっと、切ない。

何度目かにそう言われたとき、娘を抱っこして聞いてみました。
「お母さんがこわい顔してたらいや?」

娘は泣きそうな顔をしながら、
「ママ、ニコッてしてほしいの!」と。

やりたいこと
やるべきこと
やらないといけないこと

わたしたちの毎日の中には
いろいろな“タスク”があります。

そのひとつひとつはどれも大切で、
それぞれに意味があり、
その積み重ねで“日々”が出来上がっています。

けれど、わたしはその中に、
1番大切なものを入れ忘れていました。

「わたしが笑顔でいられる環境をつくる」


思っている以上に、
娘はわたしのことを見てくれていて、
大きな影響を受けながら成長している。

「娘のため」と思いながら、
つめこんでいる“タスク”が、
いつの間にか逆効果になってしまっているのかもしれません。

娘を産んですぐの頃、
大好きな先輩お母さんにこう教えてもらいました。


「お母さんは“余裕”が1番大切」

すっかり忘れていました。

まずは日々の整理整頓を。

できること以上のものを抱え込んでいないか確認すること。
そして、手放せるものは手放していくこと。
そしてそして、手伝ってくれる人を募ること。

ひとつずつ、やっていこうと思います。
その先に、“娘と一緒に笑うわたし”がいるはず。

にしむら まさこ
大阪在住のフリーライター/ 夫と娘の3人暮らし/ 好きなことは映画を見ること、本を読むこと、珈琲を飲むこと。

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